溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「……綺麗。こんな素敵なものいただいちゃっていいんですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます」
嬉しくて、じっと眺めてしまう。
よほどだらしのない表情をしていたのだろう。
優吾さんは「喜んでくれてよかった」と私の頭を数回撫でた。
「紅葉……?」
そんな時、少し離れたところから慎ちゃんの声が聞こえて振り向く。
「あ……ごめん慎ちゃん。私用事ができちゃったから、一緒に帰れないや」
舞い上がってしまい慎ちゃんのことをすっかり忘れていた。定時を過ぎているため人通りはほとんど無いものの、慎ちゃんに一部始終を見られていたかと思うととてつもなく恥ずかしい。
優吾さんから離れて慎ちゃんの元へ行くと、慎ちゃんは私の持つミニブーケと優吾さんを見比べて、不機嫌を露わにした。
「……誰?」
「慎ちゃん、紹介するね。こちらは小田切 優吾さん」
「小田切 優吾……?って、あの?」
「そう」
もちろん慎ちゃんもEuphoria Resortsのことはよく知っているはず。
「優吾さん、こちらは私の従弟の加賀美 慎一郎です」
まだ驚いた表情をしている慎ちゃんに、優吾さんが私の隣に並んで一礼する。
「初めまして。Euphoria Resorts代表取締役の小田切 優吾と申します」
「……初めまして。加賀美 慎一郎です。いつも大変お世話になっております」
「こちらこそお世話になっております。加賀美社長のご子息でいらっしゃいましたか。突然会社前まで来てしまって申し訳ございません。お会いできて光栄です」
上品に挨拶を済ませた優吾さんはしばらく慎ちゃんと当たり障りのない会話をする。その中で、
「それで、小田切社長。紅葉とはどういう関係ですか?」
と慎ちゃんがまた不機嫌を露わにした。