溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜



「やめてよ。ラスベガスで何かあったらなんなの?私が優吾さんと付き合ってたらなんなの?昨日から慎ちゃん変だよ?」



私が声を荒げるとは思っていなかったのか、慎ちゃんは一瞬傷付いたような顔をする。



「……悪い。先行くわ」



慎ちゃんはバツが悪そうに、小走りで会社に向かって行ってしまった。


ぽつんと取り残された私は、慎ちゃんが怒っている理由が分からなくて困惑する。


今までも嫌味や文句を言われたことは数え切れないほどあれど、それとは何故か違う気がした。



「……優吾さんに会いたい」



数時間前まで一緒にいたのに、もう優吾さんに会いたい。会って、ぎゅっと抱きしめてほしくなる。


あのムスクの香りに包まれたい。


自分の口からそんな言葉が出てくるなんて思っていなかったからか、私自身が一番驚いてしまった。

< 46 / 93 >

この作品をシェア

pagetop