溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
優吾side



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「で?あれほど言ったのに呼び出すってことは緊急なんだろうな?」


「はい。申し訳ございません。資材の搬入にミスがあったらしく──」



いつからか、仕事終わりに滞在先の自社のホテルで紅葉に電話をかけるのが日課になっていた。


紅葉の芯のある甘さを含んだ声を聞くと、なによりもリラックスできて一日の疲れが取れる。


今日はせっかくの紅葉との貴重なデートの時間だったのに、ものの見事に邪魔してくれた秘書にイライラが募る。


呼ばれた理由は取引先のミスによりホテルの改装工事用の資材の搬入が遅れるため、工事の予定が大幅に変わることに対しての緊急会議だった。工事が遅れてしまえばその後の予定も全て遅れてしまう。開業前にプレオープンとして株主を招待することも決まっているため、その日程がずれてしまう可能性があった。


秘書に各社に連絡をとってもらい、どうにか当初の予定通りにできないかを調整する。


……あぁ、本当だったら今頃紅葉を抱きしめていただろうに。


次会えるのはいつになることやら。


つい数十分前のほろ酔いの紅葉の可愛い顔を思い出してどうにかイライラを沈めた。


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