溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜



ラスベガスで出会った彼女を半強制的に恋人にしたのは、単なる俺のわがままだ。


幼い頃から父親の背中を見て育った俺は、将来自分がその会社を継ぐことが当たり前だと思って生きてきた。


立場上、様々なパーティーに招待されて国内や海外に出向く機会が多かった俺は、どの国でも女性に囲まれたり取引先の重役からその娘を紹介されたりと、パーティーというものに対しての良い印象が無い。


ラスベガスでの加賀美商事の会長の誕生日パーティーも、正直全く乗り気ではなくて。


少し顔を出して加賀美会長に挨拶をしたら、とっとと抜け出そうと思っていた。


計画通りまんまと会場を抜け出した俺は、今会社でカジノホテルを建設する案が出ていることを思い出して、リサーチがてら一階にあるカジノに向かった。


ポーカーやブラックジャック、ルーレットの台で湧き上がる様々な歓声を聴きながら、少額のチップを手にゲームを後ろから眺める。


さすが世界的なカジノ。どこを見ても盛り上がっており、ここにいるだけで心が躍るような空間だと感じた。


そんな中、バカラのテーブルに足を運んだ時だった。端のテーブルだけ、静かにゲームが進行している。



「……?」



そこにいたのは、一人の女性。


アレンジされたダークブラウンのロングヘア。

その後れ毛を耳にかける姿は色気が漂っていてとてもセクシーだ。


ネイビーのロングドレスから見える細い脚とピンヒールのパンプス。


目鼻立ちのはっきりした美しい外見は、欧米人とは違うアジア系のものだった。


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