溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜



「それは紅葉の方だよ。綺麗すぎて見惚れてしまう」


「ヘアメイクのおかげですよ」


「そんなことない。元々紅葉が綺麗だからだよ。誰にも見せたくないくらいだ」



ホームページに公開はやめようか、なんて私の全身をまじまじと眺めながら真剣に考え始めた優吾さんに笑いが止まらない。



「私、優吾さんとの幸せな記念日を世界中の人に見てもらえるかと思うと、恥ずかしいけど嬉しいなあって思ってたんですけど、やめちゃうんですか?」



そう言ってみると、すぐに



「いや、予定通り公開しよう」



と頷く。


優吾さんを見ていたら、なんとなく緊張も解れた気がする。



「今日は楽しみましょうね」


「あぁ。最高の一日にしような」



手を取り合って、二人で控室を出る。


チャペルの前で優吾さんと別れ、待っていたお父様に一礼した。



「紅葉、綺麗だよ」


「ありがとう。お父様、もしかして緊張してる?」


「当たり前だ。大切な一人娘の晴れ舞台なんだ。転ばないようにしないと」


「ふふっ、大丈夫だよ」



こんなに焦っているお父様は珍しい。


その腕に手を添える。


チャペルの扉がゆっくりと開く中、



「お父様。二十五年間、大切に育ててくれてありがとうございました」



呟いて、ゲストの方々にゆっくりと一礼する。



「……泣かせるなよ」



お父様の顔を見ると、涙を堪えているように見えて。



「ふふっ。……行こう、お父様」



一歩ずつ進むバージンロード。その先には、柔らかな日差しに照らされた神聖な空間が広がっている。


真っ白な中に綺麗な咲く花を横目に、拍手をしてくれるゲストの方に笑顔を向ける。


お父様と歩いた道は、わずかだったけれど。



「紅葉を、よろしくお願いします」


「もちろんです。ありがとうございます」



お父様の腕から離れ、優吾さんの腕に手を添えた。


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