夜が明けぬなら、いっそ。




「なぁ、いい加減わらってくんねぇ?」



付き合っている男から、そんなことを言われてしまった高校2年生の冬。

保健室に呼ばれたかと思えば、単なる腹痛で私は授業を抜け出させられたらしい。



「おまえ、笑えないの?」



そんなふうに異常者を見る目でも言われてしまうなんて。

仮病なら授業に戻りたいんだけど…。



「…面白いことがあれば笑うよ」


「なに?それって俺とはつまんねーってこと?そんなの俺の台詞なんだよ」



だったらどうして付き合ってるの、私達。

告白してきたのはあなた。

断ろうとしたけど、お試しで!なんて無理強いしてきたのもあなた。



「お前のそういうとこ、やめた方がいいよ。まじで」



そっくりそのまま返してやりたい。

人の気持ちを考えず、思ったことをそのまま言うその性格。


けれどわざわざ伝えるのも面倒だから浅く頷いたタイミング、保険医不在の保健室の前でコンコンと鳴った。



「あ、兄ちゃん?」



ベッドから半身を起こすように、その先へ声をかけた私の彼氏らしい人。



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