夜が明けぬなら、いっそ。




『戸ノ内を殺したのはお前か、景秀…!!』



そうですよ、と。

笑顔で答えた15歳の夏。



『おのれふざけたことを…!!お前は徳川の裏切り者だ……!!』



だってあんな悲しい子供を、俺のような子を2度と生まない為にも。

戸ノ内が裏売買に関わっていることも、なにを企んでいるかも知っていた。

だからこれは必要なことなんだと。


俺が15なら、あの子はいま9歳。
9歳ならまだ引き返せる。



『お前は反逆者だ、景秀。だが残念だったな、我々はお前を離しやしない』


『っ、うぁぁぁぁぁあああああ!!!』


『これでお前は一生、我ら徳川軍の手駒だ。我々からは逃れられないのだ』



拷問部屋に吊るされた身体、それは1度大きな罪を犯してしまった罪人の証。


罰を与える、だからバッテンだなんて。

案外単純な奴等なんだとも笑ってしまった。



「───小雪!具合はどう…?」


「……だいぶ楽になった」


「そうか、よかった…」



むくっと起き上がった少女。

熱もさっきより引いたみたいで、顔色も良くなっている。



「…看病してくれたのか」


「そんな看病って程でもないけれどね」


「…すまない、迷惑をかけたな」


「小雪、もう今日は謝るな」



この子に早く殺されること。


それが今の、俺の任務だ───。



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