オトメは温和に愛されたい
「あっ。あのっ。ひ、ひとりで入れる、からっ」

 途中から記憶があやふやだけど、覚えている範囲だけでもさんざん痴態を見せておいて。
 それでもやっぱり熱が冷めてみると照れ臭い。

 ギュッと身体を縮こめてそう言ったら、私を抱き締めていた温和(はるまさ)の手が緩んだ。

「な、音芽(おとめ)。お前いい加減こっち向けよ」

 そんな声とともに、前髪が温和(はるまさ)の吐息で揺らされたのを感じて。

「え、えっと私、いま、きっと酷い顔になってそうでっ。……それに……それに……温和(はるまさ)とあんな……って考えたらすごく恥ずかしくてっ」

 ――だから無理ですっ。

 うつむいたまま温和(はるまさ)の胸元に頭を押し当ててイヤイヤしたら、「……いや、お前……恥ずかしかったのは……お互い様なんだけど」って、彼にしては何となく歯切れの悪い物言い。

 それが気になって、恐る恐る温和(はるまさ)の方を前髪越しに振り仰いだら、彼が真っ赤な顔をして私を見下ろしていて。

 ドキッとしてしまった。
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