オトメは温和に愛されたい
「は、温和(はるまさ)も……恥ずかしい、の?」

 ――温和(はるまさ)は異性とこういうことをしたの、初めてじゃないはずなのに?

 小声でそう付け加えたら「お、()()()()……初めてだろーが」って。

 私自身、性体験自体が初だったのだからそんなの当たり前なのに。

 そう思ってキョトンとして彼を見つめたら、まるで私から自分の表情を隠すみたいにギュッと抱き締められた。

「心の底から好きだって思う女を抱いたのは……()()()()()だったんだよ。情けないぐらい余裕なさすぎで……恥ずかしくもなるだろっ」
 って言われて。

 温和(はるまさ)の胸に顔を押し当てられた状態の私は、彼の顔が見えないもどかしさに身じろいだ。

 いま私、温和(はるまさ)からものすごい愛の告白もらったよね!?

 ねぇ温和(はるまさ)。今のセリフ、どんな顔をして言ったの?

 知りたいのにっ!

「本当は……もっと時間をかけてゆっくりほぐしてやりたかったのに……悪かったな。痛かっただろ?」

 私の頭を押さえる力を一層強くして、温和(はるまさ)がねぎらいの言葉をくれた。

 けど、ちょっと、もっ、さすがに苦し……ぃですっ。

 息ができなくてジタバタもがいた私に、温和(はるまさ)がハッとしたようにやっと腕の力を緩めてくれた。

「す、すまん」

 し、死ぬかと思、った……よ!?

 肩で息をしながら……男性の力の強さを痛感した初体験の日の明け方――。

 あ、あれ? おかしいな。幸せの余韻、どこ行ったの……?
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