オトメは温和に愛されたい
 どこか違和感のある温和(はるまさ)の様子を気にしつつも、私も自分のデスクのトレイに入れられたお知らせプリントを手に取った。

 多分これが、いま温和(はるまさ)が見てるのと同じやつだ。

 うちの学校では、毎朝お知らせのある先生方が各々小さなメモ紙に連絡事項を書いて、それを取りまとめ役の教務の先生にお渡しする。
 教務の先生がそれを日付と一緒に一枚の紙に貼り付けて印刷してくださってから、朝の職員会議に間に合わせるように各自の机に配ってくださる。

 私が手にしているのも、そうやってできた職朝会議用のお知らせメモ一覧だ。
 これに書かれたメモに沿って話が進むというのが毎朝の流れで。

 今日は養護の逢地(おおち)先生からの給食の食器の返し方への改善して欲しい点と、図書室からの利用時間変更のお知らせ、事務方からのパソコン入れ替え工事の日時のお知らせ、それから校長からの臨時職員受入れに関するお知らせが主なトピックみたい。

 逢地(おおち)先生のは子供たちが給食の食器を返す際に指導しないといけないのでメモを取りながら聞こう、と思った。

 図書室と事務方のお知らせは職員室内の月間行事予定のホワイトボードにもメモ書きがしてあるので、敢えてメモを取らなくても大丈夫かな。

 問題は――。
 校長先生の、かな。
 これ、恐らく鶴見(つるみ)先生の代わりにいらっしゃる川越(かわごえ)先生のことだよね。

 温和(はるまさ)が、どこか心ここにあらずなのは多分このせい……?
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