オトメは温和に愛されたい
「ね、音芽(おとめ)。この際だしさ、疑問に思ってること、直接先輩に聞いてみたら?」
 佳乃花(かのか)に、さらに声を低められて「素面(しらふ)が無理ならもう少し飲んでからでもいいわけだし」って付け足されて、私はグッと言葉に詰まる。


***


「いくら幼なじみって言われても……男と飲むって言われたら口出ししたくもなんだろ」

 私のバカ発言に珍しく歯切れの悪い反論をすると、
「とりあえず上がらせてもらうぞ。三岳(みたけ)も入れ」
 温和(はるまさ)一路(いちろ)を促して中に入ってくる。

 まぁ、来てしまったものは仕方ないか。

 って言うより……私の部屋(ここ)で飲もうってなった段階で想定の範囲内といえばそうなんだよ、ね。

 そもそも最初は温和(はるまさ)、俺ん()でやれって言ってたぐらいだし。


***


 リビングに入るなり当然の顔をして私の横に陣取った温和(はるまさ)をチラッと見たら、フイッと視線をそらされた。

 もぉー! 押し掛けて来たくせに何なの!

霧島(きりしま)先輩も一路もビールでいいよね?」

 佳乃花(かのか)が言って、サッと立ち上がる。

 あ、私が!って言おうとしたら、目線だけで「いいからそこにいな?」って目配せされて。
 私は浮かせかけていた腰をそろそろと下ろした。
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