オトメは温和に愛されたい
「あのね、私……婚約指輪はいらないかなって……思うの」

 だって……佳乃花(かのか)じゃないけど、ダイヤとかついていたら、怖くてつけていられそうにないんだもの。
 それに学校だとそれ、つけて仕事はできない気がするし。

「ん? 何だよそれ。俺とは婚約したくないってことか?」

 温和(はるまさ)が不服げにつぶやくのへ、「違う、違う」と首を振る。

「石が付いてたら子供たちに怪我させちゃうかもしれないし……そう言うの考えたら仕事中は外さないといけなくなるでしょう? 私、もらうからにはずっと身につけていたいから……。だから……。婚約指輪より……もっとずっとシンプルな……。その、いっそのこと温和(はるまさ)と……お……いの……こ……指輪がいいなって……思うの」

 恥ずかしくて、肝心なところが小声になってしまった。

「ん? いま何つった?」

 案の定問い返されて、私は温和(はるまさ)の腰にそっと腕を回して、もう一度、ちゃんと言うの。

「あのね、いっそのこと……婚約指輪は飛ばして……その……温和(はるまさ)とお揃いの……結婚……指輪が……欲しい……です。――……ダメ、かな」

 私も温和(はるまさ)に印をつけておきたいのだ、と(あん)ににおわせながらしどろもどろで何とか気持ちを吐き出したら、温和(はるまさ)がピクッと反応したのが分かった。

「えっとね、温和(はるまさ)。――手、緩めて……欲しい、な?」

 私も物凄く照れ臭いし恥ずかしいけど。
 でもやっぱりこういうお話は、大好きな温和(はるまさ)の顔、ちゃんと見て話したいよ?
< 329 / 433 >

この作品をシェア

pagetop