オトメは温和に愛されたい
「俺も……音芽(おとめ)が……その……嫌いじゃないっつーか……むしろ……その、アレだから」
 って。

 この歯切れの悪さ。
 温和(はるまさ)らしいけどそこは「俺も音芽が大好きだよ」って返して欲しい。

「アレじゃ分からないです。なんせ私、鈍感娘ですので」

 プッと頬を膨らませてそう言ったら

「分かれよ、バカ音芽。……す、好きじゃない女に結婚しようとか言わねぇだろ、普通」

 って……。まるで憎まれ口のついでみたいに「好き」を織り込んでくるの、ずるい。

 常態の温和(はるまさ)の「好き」はとってもレアで、エッチのとき以外にその言葉を言ってもらうのって、すごく難易度が高いの。
 可愛いも好きも、情事のとき以外にももっともっと言ってくれたら嬉しいのに。

 そんなことを思いながら温和(はるまさ)を恨めしげに見上げたら、
「指輪のことはホント悪かったって思ってるよ」
 って、違う解釈をされてしまった。
 指輪のないプロポーズを怒っていたわけではないんだけど、そのまま続けられた言葉に私は思わず息を飲んだの。

「指輪用意したりそういう手順踏んでる間にお前を誰かに奪わ(とら)れそうで怖くなったんだよ。――お前、すげぇ可愛いのに自覚なさすぎるし、奏芽(かなめ)が近くにいねぇから俺だけじゃどうしてもガードが甘くなるし。とにかくいつも気が気じゃねぇんだよ」

 ムッとしたような顔で言われた言葉だけど。
 その内容はすごくすごく私のことを好きだって主張してくれてるみたいで、キュン、ってしたの。

 温和(はるまさ)、自分がめちゃくちゃ愛を叫んでくれたこと、気がついてる?

 言ったら拗ねられそうなので、今の嬉しい告白はこっそり私だけの胸の内にしまうことにした。

 温和(はるまさ)、そんなにいっぱいいっぱい私のことを愛してくれて有難う。

 カナ(にい)云々(うんぬん)はともかく、私、すっごく幸せです!
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