オトメは温和に愛されたい
「そうだ、ハル! お前も! 俺のこと“お兄ちゃん”って呼んでいいんだぜ?」

 まるで照れ隠しのようにカナ(にい)温和(はるまさ)にそう言って。
 私は思わず笑ってしまう。

 そっか。
 私たち結婚したらカナ(にい)温和(はるまさ)のお兄さんになるんだ。

「馬鹿か。誰がお前のこと兄貴なんて呼ぶかよ。それに……俺の方がお前より1時間早く生まれてんの忘れたのかよ」

 温和(はるまさ)が不機嫌そうにそう吐き捨てて、すぐ横に立つ私の手をギュッと握ってきた。


 温和(はるまさ)はそこで私たちのやりとりをニコニコしながら見つめていた双方の両親を見つめると、「何か計画してたのとすごい順番ぐちゃぐちゃになってしまったんですけど……」とバツが悪そうに前置きをしてから、ピシッと背筋を正して立った。
 私も、それに釣られて背筋を伸ばす。

鳥飼(とりかい)さん、音芽(おとめ)さんと……お嬢さんと結婚させてください!」
 ってうちの両親に頭を下げた。
 私も温和(はるまさ)に合わせて頭を下げてから、恐る恐る両親の反応をうかがう。

「――温和(はるまさ)くんがもらってくれるなら安心だ」

 ややしてお父さんがポツン……とそうつぶやいて、グスッと鼻をすすって。
 お母さんが「もぉ、貴方ったら!」とハンカチを差し出す。

 それを見たら私も、鼻の奥がツン、としてしまって――。
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