オトメは温和に愛されたい
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鳥飼(とりかい)先生、今日は仕事、早く終われそうですか?」

 放課後、職員室でデスクワークをしていたら、温和(はるまさ)に何でもないことみたいに問いかけられた。

「はい、多分……平気、です」

 婚約報告からこっち、川越(かわごえ)先生からのちょっかいもなくなって、日々穏やかに過ごせている。
 そのお陰で、私も心安らかに仕事ができるようになって、早く帰れる日が増えてきた。

 職場への婚約宣言もあって、周りからの目もあるし、何より私、温和(はるまさ)からもらった指輪をしてるからかな。
 左手薬指にリングがあるだけで私自身かなり気持ちが引き締まって、そういうのが彼女にも伝わったように思うの。

 一度だけ、「音芽(おとめ)ちゃん、幸せにならないと許さないからね」って、すれ違いざまに声を掛けられたことがある。
 すぐに「川越(かわごえ)先生!?」って声を掛け直したけど、彼女は振り向かずに手を振って行ってしまった。

 あれ以来、川越先生は明らかに単なる“同僚のひとりとして”接してくださるようになったの。

 温和(はるまさ)もそう言う変化を感じ取ったのか、必要以上に川越先生に対して警戒することがなくなったように思う。 


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