オトメは温和に愛されたい
音芽(おとめ)はご覧の通り無茶苦茶可愛いんでね。アンタがこいつに愛されたいと思った、っていうのは百歩譲って仕方ないと思います。――けど」

 そこで私をギュッと抱きしめると「どんなにもっともらしい御託(ごたく)を並べようと、こいつを傷付けようとしたっていうのは聞き捨てならねぇし、例え音芽が情にほだされて許したとしても、俺は絶対にアンタがしたこと、許す気ねぇから」

 温和(はるまさ)が私を抱きしめる腕に力がこもる。

「こいつを人間不信にしてやりたかった? ――ふざけんなっ!」

 温和(はるまさ)が吐き捨てるようにそう言って、鶴見(つるみ)先生を牽制(けんせい)する。

 怒りのためか、いつも冷静な温和(はるまさ)の言葉遣いがかなり荒くなっているのを感じて、私は振り仰ぐように温和(はるまさ)の顔を見上げた。
 そうして、彼の凛とした険しい表情に、苦しいぐらいに胸がギュッと締め付けられたの。

 温和(はるまさ)が私のことをすごくすごく大切に思ってくれているのが分かって……、思わず感情がコントロール出来なくなる程に――。

 グッと下唇を噛みしめたら、まるで感情の不具合を調整するみたいに視界が水の底に霞んだ。


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