オトメは温和に愛されたい
 逢地(おおち)先生は養護教諭の先生で、確か今年で二十八歳。
 普段は保健室にいらっしゃるんだけど、朝礼の時や職員会議の時などだけ、ここ二年部の島の一角に設けられた彼女用の席に着席なさる。

 普段はいらっしゃらない先生方の机も、職員室にはちゃんと配置されていて、私たち低学年の担任が集められた島には、逢地《おおち》先生の他にも、図書室司書の伊佐美(いさみ)千鶴(ちづる)先生の机、音楽担当の日昔(ひむか)香澄(かすみ)先生の席など、担任以外の専科やそれに準じた先生方の机が集められている。

 ちなみに通路を挟んだ向こうには中学年・高学年の先生方の机が固められていて、あちらには担任以外の教職員の席はない。

「私が怪我しちゃったんで……もしもの時には霧島(きりしま)先生と鶴見(つるみ)先生がサポートしますよっておっしゃってくださって。それにありがとうございます、よろしくお願いしますってお答えしていたところです」

 何故か温和(はるまさ)と鶴見先生が膠着(こうちゃく)状態に見えて、私はその微妙な空気を断ち切るように逢地《おおち》先生に説明をする。

「あらっ、鳥飼(とりかい)先生、どこを負傷なさったんですか?」

 さすが養護の先生。
 怪我、と聞いてすぐに反応なさった。

 逢地(おおち)先生と私が話し始めたら、鶴見先生が脱力したようにゆっくりと着席なさって。
 それに合わせたように温和(はるまさ)も書類に目を落としてくれて、私は内心ホッとする。
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