オトメは温和に愛されたい
「え?」

 聞き返す間もなく、私は温和(はるまさ)に抱き上げられ――っていうかこれ、お姫様抱っこ!?をされ――ていた。

「え、えぇーーーーっ!!」

 余りの状況にパニックになって思わず叫んだら、物凄く迷惑そうな顔で睨まれた。
「……うるさい。黙ってろ」

 余りに怒りをにじませたその視線に、私は途端シュンとなる。
 綺麗な顔で睨まれると本当に怖いっ!
 好きな男性からのお姫様抱っこ、という女の子としてはかなり嬉しいシチュエーションのはずなのに、それをときめけない程度には迫力がっ!
 それでも、恐る恐る(うかが)い見た温和(はるまさ)の顔は本当にかっこよくて。

(まつ毛、長いなぁ。唇、ぷるぷるだぁ〜)

 思わず吐息が漏れてしまう程度にはパンチ力があるのですっ。

 温和(はるまさ)は私を抱き上げたまま、易々と足元の荷物も取り上げると、無言で家の方に向かって歩き出す。

 そう、()()()の住む家がある方角に――。
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