オトメは温和に愛されたい
「ちっ、違うもんっ!」

 さ、最初に取り分けたら間接キスにはならないでしょ!?と真っ赤になりながら言ったら、温和(はるまさ)に鼻で笑われてしまった。

音芽(おとめ)、からかわれてるの分かってて全力で反応できるとか……お前のそう言うところ、本当感心する」

 そこでふっと真顔になると、私の耳に唇を寄せてきた温和(はるまさ)が、「鶴見(つるみ)がいても同じ提案できたか?」と声を低めて聞いてきて。
 私は温和(はるまさ)の声に耳をくすぐられて思わずゾクッとしてから、投げかけられた言葉の意味を考えて言葉に詰まる。

「――そっ、それは」

 私がしどろもどろで答えるより先に、温和(はるまさ)が「無理に決まってるよな?」と決めつけるように言ってきて。
 私は温和(はるまさ)の冷たい視線に気圧(けお)されて、思わず「はい」と答えてしまう。

 実際温和(はるまさ)の言う通りで、反論の余地はないのだけれど……それでも見透かされたようにそう言われると何だか悔しい。

「なになに? 俺だけ仲間外れ?」

 カナ(にい)が茶化してくれなかったら、変な空気になってしまっていたかも。
 カナ(にい)がいてくれてよかった、と思う日が来るなんて、本当驚きだ。

「今さ、絶対ふたりしてエロい話してただろ?」

 そう思ったばかりだったのに。奏芽(かなめ)のバカ!

「そんな話、してません!」

 私が即行で否定したのに、温和(はるまさ)が「まぁ奏芽(かなめ)には聞かせられない話だな」とか意味深なことを言ってカナ(にい)を喜ばせてしまう。
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