逆プロポーズした恋の顛末

休日モードのため、顔には日焼け止めを塗っただけ。眉毛すら描いていなかった。
髪も、テキトーに一つに束ねただけで、それすらも乱れている。
昨夜は、久しぶりにお店で結構飲んだため、顔色は悪く、目の下にうっすらクマが見えた。

ひと言でいえば、


(つ、疲れが滲み出てる……)


履きかけたスニーカーを脱ぎ捨て、鏡台の前に座る。

コンシーラーを駆使して粗を隠し、カバー力抜群のファンデーションでさらにカモフラージュ。
意志が強そうに見えるようしっかり眉を描き、アイライン、マスカラ、アイシャドー、チークを施す。

昼間なので、全体的な色味は抑え気味にしたが、リップだけはきっぱりした「赤」だ。

髪は夜会巻にまとめ上げ、ジャージ素材のワンピースから、シルク素材のベージュのブラウスに黒のタイトスカート(ストッキングももちろんシルク)へ着替え、キャメル色のスプリングコートを羽織った。

靴は、背筋を伸ばさずにはいられない、七センチヒールのパンプス。

くだらないプライドかもしれないが、お金に困って玉の輿に乗ろうとしていた……なんて、勘違いはされたくない。


(まあ、何を言っても、信じてもらえないだろうけど)


バッグにお財布とスマホを入れ、ハンカチはあえて入れなかった。
みっともなく涙を見せるつもりは、さらさらない。

赤の他人とする別れ話なら、なおさらだ。

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