俺の好きにさせてください、お嬢様。




それだけ聞いて、丁寧に浅くお辞儀をひとつ。

そのままスタスタとわたしのほうへ向かってきたと思いきや───



「わっ!ハヤセっ!わたし本屋さんとケーキ屋さん行くの!!」


「エマお嬢様は本は読まないでしょう?ケーキなら今夜のデザートで出しますから」



スッと掴まれた手。

そのまま繋がれて引かれて、エスカレーターで5階へ下ってゆく執事。


そして辿り着いた、赤ちゃん用品を取り扱う広々としたベビーショップ。



「ハヤセ?ここで何か買うの?」


「はい。───ありました」


「……だれに使うの?」



ずらっと並んだ色んなデザインのハーネス&リードセット。

それはさっきの男の子が身に付けていたものと同じ…はず。


それを誰に付けるの…?

ねぇ、ハヤセ。
どうして手に取ってわたしに当ててるの?



「すみません、」


「はい、どうされましたか?」



そして首を傾げた末、彼は近くを通った店員さんに声をかけた。



「これの高校生用はありませんか?」


「……え?えっと、高校生、ですか」


「はい。これでは小さくて入らないので」


「さすがに高校生は…そもそも商品開発がされていないんじゃないかと……」



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