そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
花々里(かがり)っ! お前、昼飯の話されたぐらいで懐くなよ!」

 俺と大事な話してる最中だろ?とまくし立てられて、「はて?」と思う。


「えっと……お腹が空いたら何にも頭に入ってこなくならない?」


 キョトンとして言ったら、「バカ!」って言われて、それこそいつもの調子でスパーン!と頭を(はた)かれそうになる。

 思わず条件反射で身構えてギュッと目をつぶったのと、頼綱(よりつな)が私を腕の中に抱き締めて守ってくれたのとがほぼ同時で。


「……?」


 叩かれずにすんだのはありがたいけれど、そんなに目一杯抱き締めなくてもよくないですか?

 もう離してくれても大丈夫だよ?

 そもそも寛道(ひろみち)のスパーン!は手加減されてて、そんなに痛くないし、ね?


 そう思いながら一生懸命身じろいでみたけれど、全然抜け出せないの。


「幼なじみだか何だかしらないが――。か弱い女性に手をあげるとは何事かね?」


 頼綱(よりつな)の、低められたその声に不覚にもドキッとしてしまう。

 さっき私を「モノ扱い」したのと同じ口で、今度は「か弱い女性扱い」してくれるとか。



 振り幅ありすぎて……めちゃくちゃ照れ臭いんですけどっ。
 と、特に「か弱い」のところっ!



 そう思ったのも束の間――。
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