そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 くらりとしてフラついたところを、そっと肩を抱かれるようにして久遠(くおん)さんに支えられる。

 大丈夫?と優しく問いかけられてうなずくと、

花々里(かがり)さん、百花蜜(ひゃっかみつ)ってご存知?」

 さらに重ねるように久遠さんから問いかけられて、百花というくらいだから色んな花の蜜のことかな?って思った。


「……蜂蜜か何かですか?」

 言ったら、「そう、蜂蜜。レンゲの蜂蜜みたいに蜂たちが採取してきた花の種類を一種に限定できない蜜をそう呼ぶの」

 春に野に咲き乱れる花々の蜜から出来た蜂蜜らしい。


「その百花蜜をね、()()()()()で発酵させたのがそれ」

 言って、私の手のなかのグラスを指さして、久遠さんが嫣然(えんぜん)と微笑む。

 そんな彼女に気圧(けお)されて、私は思わず生唾を呑みこんだ。


 特別な製法って何だろう?
 企業秘密か何かかな?
 だとしたら今を逃したら2度と出会えない味かもしれない……。

 すっごく飲んでみたいっ。
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