そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 まるでそう願った私の心を見透かしたみたいに、久遠(くおん)さんが言う。

「それね、すごく美味しいから是非花々里(かがり)さんに飲んでみて欲しいの。それが小瓶(この子)の望みでもあるし。……ただし――」


 美味しい、と言う言葉で私の心は決まったも同然。

「いただきます」
 言うが早いか、一思いにクイッと煽った。


 途端、プチプチと口の中で小さく泡が弾けたのが分かった。
 そのお陰かな。味自体は物凄く甘ったるかったはずなのに、全然それを感じなかったの。


「美味しい」

 ほぅっと溜め息をついたのと、

「ちょっとずつ飲まないと困ったことになっちゃうの」

 久遠(くおん)さんがそう言ったのとがほぼ同時だった。
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