政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「就職して、アパートを借りて暮らします」

「井垣会長が君のために遺した財産はどうする?」

「放棄します」

急にブレーキが踏まれ、座席に頭をぶつけそうになったのを壱都さんの手が受け止めた。

「樫村。気をつけろ」

「すっ、すみません。あまりに無欲すぎて驚きました。いつも、白河家の人間に囲まれているせいか、自分の心が汚れていることに気づきませんでした」

「誰が強欲(ごうよく)だって?」

さすがの壱都さんもそれは聞き逃さなかった。

「一応、自覚はあるみたいですね」

「欲がないなら、生きていても人生が退屈でしかたないよ」

「壱都さんは退屈が嫌いですからね」

「そうだよ?どうせなら、楽しい方がいい」

私は壱都さんが善意や好意から、助けてくれたのだと思っていた。
そんなわけなかったのに。
私だけなにも知らず、馬鹿みたいに彼を信じて、好意まで持って。

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