政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
物心ついた頃には兄達はすでに頭角(とうかく)(あらわ)し、周囲から信頼を勝ち得ていた。
祖父母や両親は兄以上に優秀であることを望んだ。
俺はそこそこ器用で、なにをしても平均以上にはこなせたせいか、大人達を喜ばせるのがうまい人間になっていた。
喜ばれると子供だった俺は嬉しくて、周囲の大人のために生きるようになっていた。
気づけば、本当の自分の姿も自分の望みもわからない―――そんな人間になっていた。
ただ流されるように生きていた。
周りが望むままに。
そんな時に井垣会長に出会ったのだ。
井垣会長は一目で自分がどんな人間なのか、見抜いた。
『白河の孫か。優秀でも人形ではな』と初対面で言われた。
さすがにあの人は騙せなかった。
それから井垣会長とたびたび会うようになり、実の祖父よりも祖父らしい存在で、家族よりも俺を理解してくれていた。
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