政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
結婚相手だというのに俺達の関係はまるでルームシェアだ。
昨日もさっさと自分の部屋に入り、婚約者同士の語らいなんて一つもなかった。
男として認識されていない気がするのは俺の気のせいか?

「壱都さん」

「なんだ」

「マンションの前に白河のボディガードと言い争っている女性がいますけど、紗耶香(さやか)さんでは?」

ちら、と車の窓の外を眺めると確かにいる。
派手なピンク色のコートとフリルたっぷりのスカートをはいた女が。

「面倒だな」

「うまくかわすしかないでしょう。壱都さんは白河財閥の王子って呼ばれてるくらいなんですから。頑張って下さい」

「……嫌味か」

はあ、とため息を吐いた。
俺がこうなってしまったのも、そもそも白河家のせいだ。
末っ子ともなると、大人の目に留まるには兄達より優秀でなければ、相手にされない。
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