政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
私の心配なんて、必要ないのかもしれない。
一人慌てているような気がする。
樫村さんなんて『温泉旅行たのしんできてください!』なんて、すごくいい笑顔で言っていた。
壱都さんを全面的に信頼しているという様子だった。

「もっと壱都さんを信頼しよう」

きっと深い考えがあるはず―――たぶん。
今は温泉を楽しもう。
大浴場の広い浴場にうっとりとした。
旅行にあまりきたことがない私は温泉旅行に憧れていた。
お湯がわき出ているところに『飲めます』と書いてあり、飲んでみると塩辛くてしょっぱかった。
海の近くの温泉だからだろうか。

「海の味がする」

ふふっと笑いながら、お湯の中に浸かった。
平日だからか、お客さんはほとんどいなくて、貸し切り状態。
温かいお湯が心地よく、窓からは海が見えた。
その窓には湯気によって水滴が張り付き、天井からも水滴が雨みたいにぽつぽつと降ってくる。
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