政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
ポカンと口を開けた私に壱都さんが代わりに答えてくれた。

「機会がありましたら、ぜひ」

「楽しみにしていますわね」

すっと手を差し出されて、緊張気味に握手した。
まるで、外国のようだった。

「それではね」

上品なマダムは微笑むと去っていった。
なんて優雅な身のこなしだろうか。
すべてが自然だった。

「これから、こういうことは何度でもあると思うよ」

「……わかってます」

慣れないといけない―――今になって指のダイヤモンドがずっしりと重く感じられたのだった。

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