政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「しっかりされたものでしょう?」

くすくすと先生は笑った。

「そうですね」

壱都さんは目を伏せて、手紙を見つめていた。
白河会長よりもお祖父さんとは気が合っていたからか、私と同じようにこの手紙を読んで思うことはたくさんあったようだった。

「孫が可愛くて仕方ないんですよ。白河会長もきっと同じ気持ちですよ。早くひ孫の顔を見せてさしあげて」

明るく笑う先生に壱都さんと私は深く頭を下げたのだった―――


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


お祝い事を避けてきたけれど、お祖父さんの手紙を読んで、私と壱都(いちと)さんは籍だけでも入れようという話になった。
入籍前に白河家に挨拶をしておこうと壱都さんに言うと例にも漏れず、反対された。
白河のお祖父さんとは最低限の付き合いだけでいいと言われたけど、そんなわけにはいかない。
お祖父さんが好きだったフルーツゼリーを選び、手土産にした。
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