政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「見ましたけど」

「どうだった?キュンとしなかったかい?」

町子さんだけじゃなく、周りにいた使用人全員が期待を込めた目で私を見た。

「どうもしません。私には恋愛する余裕なんてありませんから」

そう、恋愛をするには時間もお金も必要なのだ。
私にはその両方がない。
おしゃれで身綺麗にしている紗耶香さんと地味な服にエプロンをつけただけの私。
男の人なら間違いなく、紗耶香さんを選ぶだろう。

「夕飯の豆のすじとりを手伝います」

「なーに言ってるんだい!あの王子様に自分を売り込まないと!」

「いいですから、夕飯の豆をください」

「豆より今は王子様だよ!」

「王子様より豆です」

私が町子さんの言い争っていると、遠くからスリッパの音が聞こえてきた。
紗耶香さんが壱都さんの名前を連呼して、ずっとおしゃべりを続けている声が台所まで聞こえ、町子さんは黙った。
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