政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
◇ ◇ ◇ ◇ ◇


眩しい朝の光に目を開けた。
なんだか、暖かくて安心できて、甘い香りがする。
まだはっきりしない頭の中でそんなことを思っていた。
ふかふかのベッドは暖色系で床の絨毯と同じ色合いをしたカバーで寝室も豪華なのねって―――寝室にいる?
それも私の体を抱き抱えるようにして眠っているのは壱都さんだった。
ど、どういうこと―――!?

「ああ……起きたのか。おはよう」

「あ、あ、あのっ……この状況はいったい」

眠そうに何度か目を閉じ、うとうととしている壱都さんは私に言った。

「昨日、目が覚めたら君が眠っていたから、抱き上げてベッドに運んだ。起きる気配もないし、夜も遅かったから、このまま泊まらせたほうがいいと判断した。他に質問は?」

「ありません」

恥ずかしい。
昨日、壱都さんが起きるのを待ってから、自分の宿泊先のホテルに戻るつもりが、そのまま眠ってしまったようだった。
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