政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
お祖父さんを惜しむ人達が大勢訪れていた。
そんな中、父に声をかける人はわずかで人望のなさが見て取れた。

「旦那様は酷すぎますよ。朱加里(あかり)さんを大旦那様のそばにも寄らせず、台所にいろなんて……!」

「いいのよ。町子さん」

こうして、台所で働いている方が、気が(まぎ)れる。
じっとしていると、思い出して泣いてしまいそうになるから、ちょうどよかった。
お茶のお湯を沸かし、新しいお茶の葉を取り出した。
棚からまだ使っていない湯呑をお盆に並べ、次々やってくるお客様のために準備をする。
騒がしい弔問客がいる場所と違って台所は静かでホッとする。
愛人の子だと言われるよりは台所にいたほうがずっとマシだった。

「それにしても、大旦那様が亡くなったばかりだというのに。旦那様や奥様達は楽しそうにされて。大旦那様が亡くなったたから、自由にやれると思っているんでしょうね」

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