ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
「先輩、どうしてここに……」

「中峰、お前、真珠を知っているのか」
と桔平が言うと、中峰は困った顔をする。

「やっぱり、花木のご主人は先輩だったんですね。
 さっき知り合いからメールが入ってたのに気がついて。

 社食の人たちが、花木の本名は『有坂真珠』だって言ってたって……」

 桔平は腕組みして渋い顔をする。

「冷静に考えたら、お前が追ってきたのは真珠だってわかったかもしれないのにな。
 ちょっと俺もこのところ、熱に浮かされていたようだ」

 中峰、と桔平は後輩に呼びかける。

「お前、真珠に告白しにこんなところまで来たんだろう。
 お前先にしろ。

 俺は後からする」

 いや、なに言ってるんですか、この人は……と真珠は思っていたが、
「先輩っ」
と中峰は感激していた。

「……いやでも、花木はもう先輩の奥さんなんですよね?」
と確認していたが。
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