天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~



雪梨と香林は抱き合って泣いていた。


「皆、心配かけたな」

「本当ですよ」


朱雀の涙で衣が濡れるのを防ぐように、やんわりと朱雀の身体を離した。

それにしても妙に視界がいいな。

薬師神はどんな薬を使ったんだ。

左目につけていた仮面を取ると、朱雀が大きな声をあげた。


「紅蓮様!」

「今度はなんだ?」


呆れるように朱雀に問うと慌てて朱雀は鏡をもってきて渡した。


「見てください」

「起きて早々に自分の顔を見ろと?」

「いいから!」


真剣に言う朱雀の言う通りに紅蓮は鏡を見た。


「これは…」


そこには自分の顔があった。そして二つの目。左目がある。

羅刹にあげたはずの左目。

それが紅蓮の元に帰ってきたのだ。


< 205 / 258 >

この作品をシェア

pagetop