天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
雪梨と香林は抱き合って泣いていた。
「皆、心配かけたな」
「本当ですよ」
朱雀の涙で衣が濡れるのを防ぐように、やんわりと朱雀の身体を離した。
それにしても妙に視界がいいな。
薬師神はどんな薬を使ったんだ。
左目につけていた仮面を取ると、朱雀が大きな声をあげた。
「紅蓮様!」
「今度はなんだ?」
呆れるように朱雀に問うと慌てて朱雀は鏡をもってきて渡した。
「見てください」
「起きて早々に自分の顔を見ろと?」
「いいから!」
真剣に言う朱雀の言う通りに紅蓮は鏡を見た。
「これは…」
そこには自分の顔があった。そして二つの目。左目がある。
羅刹にあげたはずの左目。
それが紅蓮の元に帰ってきたのだ。