マエノスベテ
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マエノスベテが怒らない、
彼女の家に居ても、暴動が
起きない男――

「……が、なぜ女装」


目の前で、顔を真っ赤にする男は叫んだ。

「あいつにやらされたんだ!
あいつのいる、炒めドラゴンチャーハン部隊は、男しか入れない! 協力者も、男でなきゃならなかった!」

「あの悪名高いチンピラ集団か……名前しか知らないが、確かにバレたらまともなら女性なら集まらなさそうだな」

「あいつは相当独占欲が強い。俺様の物は俺様のものってやつだ! 下っ端の俺が、昔あいつと義理の兄弟だと知ると、理由を付けて中に入らせ、男物のものが無いか、日記に余計なことが書いてないか、逐一報告させていた。

……そのうち――なんていうか、愛着が沸いて、さ」


ムードが、穏やかなものに変わる。ぽっと恥ずかしそうに頬を染めた。

「はあ?」

彼があきれる声。

「いや、なんか、俺が、このまま、アイツになれば、よくね? とか……
いや、ダメだそんなの、とか、思ってたときに、

奴は囁いた。
「なれるなら、お前を代わりにしてやる。相応しいか試してやるから、一度女装して飯でも食べに行かないか。うまくやれたら――」  」


2019/06/18 12:39
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「なるほど、それを写真に利用されたようだ」

彼が、冷静にうなずく中、男は惨めだと嘆くように、まだ紅潮している顔と、赤くなった目でぼくらを睨んだ。

「せめて、金さえ……安くても数千は貰えたはずなんだ、うまく、やれていたら、ラーメン屋じゃバレなかったってのに」

大体理解した気がしたので、彼女が居なくなったことを、ぼくは彼に耳打ちした。

「それは大変。追いかけなくては。コレも引っ張っていこうか。悪名高いだけあって、警察に引き渡すってのが正しいだろうけれど」

彼はポケットから男の携帯電話を取り上げる。電源は入っており、都合良くもロックは解除されたばかりという状態だった。着信履歴にある番号をさっさと記憶した彼は、すぐに鞄から出したメモ帳へとメモする。

「うむ、どれかが、マエノスベテのものか……なになにー、タチバナ、クチヤマ、ヤモト……」

電話帳に登録してあると横に名前が出るので、それを読み上げていた。

「この、立場名わわ子には連続で二回かけているね――誰かな」

「誰が教えるか、大体、偽名かどうかも怪しいのに」

「クチヤマ智夫、これは?」

「話を聞け!」

「あ」

――櫻って名前もあった。

ぼくは、彼を押さえつつ発見する。
男の名前だけで見れば、最初の方に上がった智夫が怪しげだったが、別用の可能性もある。
先週の金曜日まで遡ると、彼は携帯をまた捩じ込んだ。

「あいつはすぐ携帯を変えるから、繋がると思うなよ」

「なるほど、頻繁に契約変更しに来るやつをマークできるよう言っておくよ」

「言うって、誰に――」

「きみが知る必要はない」

彼は呆れながら男を立ち上がらせる。

――まあ、もっとも、バイトを雇うくらいわけないのだろうけれど。とは誰も言わなかった。

2019/06/19 14:19
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