君と、サヨナラの恋

窓の外から視線を外して顔を上げると、通路を進んだ一番奥に小さなカウチが置いてあるのが見えた。

見るとその背もたれの上からぴょこんと2つ、ウサギの耳みたいなものが突き出している。

ドキッとしてよく見ると、それは誰かの上履きの上半分だった。

誰かが寝てる……?

その誰かの足先を見た瞬間に、あたしの中で一気に、あのうわさへの期待値が上がった。

「うちの高校の『失恋の神様』の噂知ってる? 辛い恋とか叶わない恋を忘れさせてくれるんだって」

教室で信憑性の薄いうわさについて笑いながら話していた、レミの声が脳裏に蘇る。

あたしはゴクリと唾を飲み込むと、そーっとカウチに近付いた。

モデル級の美人だったっけ?

もしくは可愛い男の子。

あとは、女好きのイケメンてうわさもあったな。

できたら……女の人だといいな。

だけど、女の人だったらカウチの背もたれに足上げて寝たりしてないか。

カウチとの距離が縮むのにつれて、胸のドキドキが速くなる。

背もたれの端にそっと手を載せて上から静かに覗き込む。

するとそこは思いもよらない人が寝転がっていて。思わず驚きの声が漏れた。
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