僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
「じゃあ、葵咲は今でも僕を兄として見てると?」

 問えば、葵咲ちゃんは唇をかみしめてうつむいてしまった。
 そんなに力一杯唇を噛んだら噛み切ってしまうじゃないか。
 そう思ったら、無意識に僕は彼女の顔を上向け、噛みしめられた唇の端に、自分の指を潜り込ませていた。

 そうしてそのまま吸い寄せられるように口付ける。

 突然キスしてきた僕を押しのけようと伸ばされた両手を掴むと、そのままひとつに束ねて書架に縫いとめる。

 唇を割っていた指をのけると、その手で彼女の後ろ頭を抱えて、顔を少し上向かせるようにして口付けの角度を深くする。

 そうしていてもなかなか口を開いてくれない彼女に焦れて、僕は一度唇を離して耳元に顔を寄せると
「口、開いて……」

 そう言って、もう一度唇をふさいだ。
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