僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
嫉妬心はだれのもの?
 迎えを切り出した僕に、あろうことか彼女は大学にいると言った。それも、比較的人通りのある本館ではなく、図書館前にいるのだ、と――。

 館内の電気は消えて、頼りない門灯1つの薄暗い図書館前に彼女が一人でいるのだと思うと、僕は居ても立ってもいられなくなった。
 構内の食堂かカフェに移動してくれたら……と思ったけれど、この時間ではさすがに閉まっているだろう。

 僕は取るものもとりあえず、車に乗り込んだ。

 今日ほど大学の敷地の広さを呪ったことはない。
 図書館に一番近いところにある駐車場に車を停めて、そこから全速力で走ったけれど、なかなか目的地にたどり着けなくて、気持ちばかりが焦った。
 いつもなら職場までの距離を、こんなに遠いとは感じないのに。
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