【SR】卵


夕食を終え、静かな二階のリビングを通り過ぎ、三階の自分の部屋へ戻った。

勉強をしようと思うものの、なんだか心が苛立って集中できない。



なんのための受験で、誰のための進路で、私はなんのためにここにいるんだろ……



私の目の前には、さっき受け取った、卵の人形が置かれている。

向き合っていると、なんだかこの人形が、私の心の内を聞いてくれているような気になってきた。

深い緑の瞳が、ジッと私を見つめている。

真っ暗な部屋で、デスクライトが、眩しく机上を浮き上がらせている。

閉じられた参考書の上で、人形が私に微笑みかけてくれているようだ。







「家族なんて、みんな、いなくなっちゃえばいいのに……」







そう呟いた私は、静かに人形にキスを落とした―――







< 13 / 35 >

この作品をシェア

pagetop