【SR】卵
夕食を終え、静かな二階のリビングを通り過ぎ、三階の自分の部屋へ戻った。
勉強をしようと思うものの、なんだか心が苛立って集中できない。
なんのための受験で、誰のための進路で、私はなんのためにここにいるんだろ……
私の目の前には、さっき受け取った、卵の人形が置かれている。
向き合っていると、なんだかこの人形が、私の心の内を聞いてくれているような気になってきた。
深い緑の瞳が、ジッと私を見つめている。
真っ暗な部屋で、デスクライトが、眩しく机上を浮き上がらせている。
閉じられた参考書の上で、人形が私に微笑みかけてくれているようだ。
「家族なんて、みんな、いなくなっちゃえばいいのに……」
そう呟いた私は、静かに人形にキスを落とした―――