実らない恋だとしても… あなたへの想いが溢れそうです
橘恭介は相続を決めると、早速屋敷を下見して蔵の重要さに気付いた様だ。
彼は相続の手続きで時間が取れないから、信頼できる人物に仕事を依頼した。
その主な作業は蔵にある収蔵品の点検と整理だが、何しろ数が多い。
しかも、金目の物に集るハイエナのような古美術商に気取られないよう、
目録作りには細心の注意を払うのというのが第一条件だ。
恭介が忙しくしている自分の代わりに蔵の整理を頼んだのが、
大学を定年で退官した後、文筆活動をしていた佐竹光伸だ。
蔵を見た彼は、即座にその仕事を引き受けた。
それ程魅力的な収蔵品だったのだろう。
だが、佐竹一人ではとても作業出来る量ではない。
仕事を一任された佐竹は、自分の教え子に助けを求めた。
京都から離れた東京の美術館に勤める三雲経由で、真穂に話が来たのだろう。