実らない恋だとしても… あなたへの想いが溢れそうです
あなたの側にいたいから


 朝晩が余り冷え込まなかったので、その年の紅葉はいつになく遅かった。
それでも秋の京都は複雑に重なりあう黄や朱に彩られて美しい。

橘家に暮らす面々は、表面的には変わらない日常を過ごしていた。

蔵の整理をするメンバーは黙々と作業を続けているし、
恭介は何か考えがあるのか良く出掛けるようになっていた。


ただ真穂には、あの日を境に洸から短いメッセージが届く。
環がアドレスを教えたらしい。事後承諾だが、やっと洸との繋がりが持てた気がした。


『変わりないか?』

『体調は?』

『明日の朝は冷え込みそうだ。風邪ひかないよう気をつけて。』

何気ないひと言だったが、彼らしいとさえ思う。
あれこれと言葉を飾る事の出来ない人だ。

だからこそ、心から真穂を気に掛けてくれているのがわかる。


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