実らない恋だとしても… あなたへの想いが溢れそうです



真穂が二階の自室に上がってからも、克行と晴美は飲みながら喋っていた。

「ホントにどうするの?」
「何を?」

「夏子ちゃん。もの(・・)になるの?」

「さあなあ…。」
「あらやだ、らしく(・・・)ないわねえ…。」

「この業界に向いてたのは、きっと真穂だろうからなあ。」
「えっ!そうなの?」

「そうだよ。あの子はほんの小さい時に、祖父さん祖母さんが話して聞かせた物語を
 寸分違えず覚えて、身振り手振りを付けながら上手に喋ったよ。舞台女優みたいにさ。」



「まあ…知らなかった。」

「それを見た貴子が、子役でデビューさせようとしたんだが…。」

「あ、もしかしてお祖母さんが反対した?」
「そうなんだ。母は貴子を嫌ってたし、孫を芸能界なんて入れる訳がない。」

「あらあら、真穂ちゃんの運命はお祖母さんが決めちゃたのね。」

「でも、貴子もそれで良かったんじゃないか?」
「どういう事?」

「自分を脅かす存在が一人減ったわけだから。」

「ああ…。女の世界はコワイからねえ。母娘でもねえ。」

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