僕惚れ②『温泉へ行こう!』
 唇を奪われた弾みにそこにあった大樹に押しつけられて、身体を引きたくても動けない。

 彼を押し退けようと厚い胸板に手を当てると、邪魔だと言わんばかりに一纏めにされて絡め取られた。

 片手で簡単に動きを封じられてしまうことに、理人(りひと)の男を感じてしまう。

 私の抵抗を封じた理人が、口づけながら空いた方の手でブラウスのボタンを1つずつ(くつろ)げ始めた時にはさすがに焦った。

「り、ひとっ。やだっ、ここ……外っ」

 何とかキスの合間を縫うように抗議の声を上げるけれど、彼は聞く耳を持たないとばかりに、私を熱に浮かされた目で見つめてくる。

 さっきまでの無表情が嘘みたいな、追い詰められた獣みたいな表情に、私は思わず現状も忘れて見惚れてしまった。

「僕を、こんな風に追い詰めたのは葵咲(きさき)だろ?」

 新幹線の中からずっと、君を抱きたくて堪らなかった……!

 まるでうわ言のように、熱い吐息とともに感情をぶつけてくる理人。

 ブラウスのボタンを全部外し終えると、理人はブラのホックまで外してしまった。

「――僕が好きなら抵抗しないで?」

 まるで懇願するようにそう言うと、彼は私の戒めを解いた。

 すぐに胸を隠したかったけれど、理人の泣きそうに苦しげな表情がそれを躊躇(ためら)わせる。

 そんなことを言われたら、私が抵抗出来なくなるのは分かっているくせに……理人はずるい。

「意地悪……」

 ギュッとスカートを掴んでそう言って、彼を睨むのが私に出来る精一杯の抗議。

 彼は私に抵抗する意思がないのを確かめると、ホッとした顔をした。

 そればかりか、私が理人のことを好きな気持ちを試すように、肩ひもをずらす様にして肌蹴させた胸を、色づきに沿って弄んでから、先端の敏感なところを口に含む。そうしながら上目遣いで私を見つめて問いかけてくる。
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