僕惚れ②『温泉へ行こう!』
 こんな丸見えの造りのお風呂、さすがに一人ずつ入るほうが恥ずかしいかも知れない。

 でも、一緒に、と思うとそれはそれで照れ臭くて。

「……はい」

 思わず緊張して返事が敬語になってしまった。

 意識しすぎているみたいで、赤面してうつむいたら、理人(りひと)の手がゆっくり伸びてきて、私の髪に優しく触れる。

 夏なので下ろしておくのは暑くて、サイドテールにして、更にそれをゆるく編みこんでいた。

 今日はさすがに色々ありすぎて、大分ほつれてきている。

 その後れ毛を私の耳にかけながら、理人が「こっち向いて?」と言った。

 ゆっくり顔を上げると、私の顔をじっと見つめる理人の顔が間近にあって。何だか凄くかっこいいな、って思った。

葵咲(きさき)、大好きだよ」


 もう何回聞かされたか分からない台詞だけど、いつもと違うシチュエーションだからかな。

 初めて言われたみたいに胸の奥がじん、と温かくなった。

「私も……理人(りひと)が大好き……です」

 しどろもどろになりながらそう返したら、理人が嬉しそうに微笑んだ。


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