僕惚れ②『温泉へ行こう!』
しばらく彼に手を引かれて歩いていた私は、気持ちが落ち着いてきたと同時にあることに気が付いてしまう。
理人は、浴衣姿のままだった――。
「目が覚めたらキミがいないんだ。着替えてる暇なんてないに決まってるだろ?」
よく見れば、顔は洗っているみたいだけれど、ほんの少し寝癖も残ったままで……。
いつもビシッとしているイメージの理人だけに、その姿は本当に私のことを心配してくれたんだ、と分かるもので――。
「ごめんなさい……」
ほんの少しの距離だから、一人でも大丈夫だと思ったの……と付け加えたら、理人に怖い顔をされた。
「葵咲、キミは自分が方向音痴なこと、もっと自覚したほうがいい。……それに――」
怒られても、その通りだから何も言えなくて。言い返せなくて俯いていたら、繋いだ手をギュッと握り締められた。
「……それに――、同級生の彼がキミのことを意識していたのは丸分かりだったし、そんな中一人で出歩くとか……どれだけ自分の魅力に無自覚なの」
少し非難めいた口調。
思えば、正木くんに出会ってからずっと、理人はざわついていた。
私は、そんな彼の真意に気付いて、もっと配慮すべきだったのだ。
「ごめんなさい……」
何度謝っても謝り足りない気がした。
しゅんとしてそう呟いたら、そんな私を彼がギュッと抱きしめて、
「でも……本当、間に合ってよかった……」
心底ホッとしたようにそう告げる。
その言葉に、私は胸の奥がじん……と熱くなるのを感じた。
「理人、助けに来てくれて、本当にありがとう……」
あの時、もしも彼が来てくれなかったらと思った途端、足がすくんでしまうぐらい怖くなった。
力ずくで押さえつけられなくても、身動きが取れなくなってしまうことがあるんだと、私は身をもって実感したから。
「もう、大丈夫だから……」
気が付くと小さく震えていた私を気遣って、理人が優しく頭を撫でてくれる。
そうしながら、耳元で、
「だから二度と、僕の傍を離れるなよ?」
――そう、言われた。
理人は、浴衣姿のままだった――。
「目が覚めたらキミがいないんだ。着替えてる暇なんてないに決まってるだろ?」
よく見れば、顔は洗っているみたいだけれど、ほんの少し寝癖も残ったままで……。
いつもビシッとしているイメージの理人だけに、その姿は本当に私のことを心配してくれたんだ、と分かるもので――。
「ごめんなさい……」
ほんの少しの距離だから、一人でも大丈夫だと思ったの……と付け加えたら、理人に怖い顔をされた。
「葵咲、キミは自分が方向音痴なこと、もっと自覚したほうがいい。……それに――」
怒られても、その通りだから何も言えなくて。言い返せなくて俯いていたら、繋いだ手をギュッと握り締められた。
「……それに――、同級生の彼がキミのことを意識していたのは丸分かりだったし、そんな中一人で出歩くとか……どれだけ自分の魅力に無自覚なの」
少し非難めいた口調。
思えば、正木くんに出会ってからずっと、理人はざわついていた。
私は、そんな彼の真意に気付いて、もっと配慮すべきだったのだ。
「ごめんなさい……」
何度謝っても謝り足りない気がした。
しゅんとしてそう呟いたら、そんな私を彼がギュッと抱きしめて、
「でも……本当、間に合ってよかった……」
心底ホッとしたようにそう告げる。
その言葉に、私は胸の奥がじん……と熱くなるのを感じた。
「理人、助けに来てくれて、本当にありがとう……」
あの時、もしも彼が来てくれなかったらと思った途端、足がすくんでしまうぐらい怖くなった。
力ずくで押さえつけられなくても、身動きが取れなくなってしまうことがあるんだと、私は身をもって実感したから。
「もう、大丈夫だから……」
気が付くと小さく震えていた私を気遣って、理人が優しく頭を撫でてくれる。
そうしながら、耳元で、
「だから二度と、僕の傍を離れるなよ?」
――そう、言われた。