僕惚れ②『温泉へ行こう!』
帰宅後
「よろしくお願いします」

 私は今、理人(りひと)の住むアパートで、彼と向き合って、照れながら挨拶なんて交わしている。
 さすがに三つ指をついて……とかそう言う感じではないけれど、それでも充分かしこまった気持ちになっているのは事実で。


 ――と言うのも……。


 旅行から帰ってきたその足で、理人は私を家まで送り届けてくれた。

「大丈夫? 疲れてない?」
 温泉旅行とはいえ、色々あったし、やはり家で過ごす休日と違って、身体は思いのほか疲れている気がした。

 特に、今回の旅行では色々ありすぎて……多分理人は私以上に精神的に削られているはず。
 新幹線での移動だったし、長距離運転をしてもらったわけではないけれど、そこに至るまでの経路は彼に運転してもらったこともあって、私は理人が心配で堪らなかった。

 でも、彼は憔悴(しょうすい)した素振りは微塵(みじん)も感じさせず、そればかりかとても(りん)としていた。

「ん? 僕は大丈夫だよ。葵咲(きさき)こそ、無理してない?」
 私の言葉に、逆にこちらの心配をしてくれる理人。
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