あなたに、キスのその先を。
「前の車はこれより一回り小さかったんですけど、それだと結構しんどくて」
 とおっしゃるのへ、
修太郎(しゅうたろう)さん、弟さんや妹さんがいらっしゃるんですか?」
 と思わずお聞きしてしまった。

 修太郎さんは、そういえばお話していませんでしたね、と前置きをなさってから「僕には年の離れた弟と、その弟と数歳違いの妹が二人いまして……。いわゆる四人兄弟妹(きょうだい)の長男というやつです」とお話くださった。

 修太郎さんに、三人も血の繋がったご弟妹(きょうだい)がおられるということに、一人っ子の私はとても驚いてしまった。
 それと同時に、
「賑やかそうでとてもうらやましいです」
 と率直な感想を言うと、「まぁ、でも……今は一緒に住んでいないので」と少し声のトーンを落とされる。

「……やはり一人暮らしはお寂しいですか?」

 言いながら、私は思わず吸い寄せられるようにセンターコンソールに載せられた修太郎さんの左手に触れてしまった。
 途端、驚かれたように、ほんの一瞬修太郎さんが私に視線を流してから瞳を見開かれて――。
< 122 / 358 >

この作品をシェア

pagetop