あなたに、キスのその先を。
「……あ、ご、ごめんなさいっ」
 運転中のかたの手に触れるとか……例え使っていないように見えるからって非常識だったよね。
 そ、それに……。

(私、何て大胆なことをしてしまったんだろうっ)

 そう気付いたら、顔がブワッと熱くなった。

(あーん、私のバカぁー)

 大失態(だいしったい)に、恥ずかしくて(もも)の上で両手をモジモジと揉み合わせていたら、修太郎(しゅうたろう)さんの手が伸びてきて、私の手の甲に触れた。

 そうして、そのまま右手をとらえると、恋人つなぎのように指を絡めていらして……。
 そのままセンターコンソールの上に引っ張り上げられてしまう。

「――っ!」

 驚いて手を引こうとしたら、
「どうかこのまま……」
 運転中なので視線は前方に向けられたまま。でも、言葉と一緒に、ギュッと組み合わされた指が握られて……私はそれだけで心臓が壊れそうに高鳴ってしまう。

 重ねられた修太郎さんの手の温もりが心地よくて……。どこか気恥ずかしいのにこの上なく幸せで。

「……あのっ、お邪魔じゃ、ないですか?」
 それでも一応運転の(さまた)げになっていやしないかと心配すると、「問題ありません。むしろとても落ち着きます」と言われてしまった。

「……それから先程の一人暮らしの話ですが」

 少し間を空けて修太郎さんがそう話し始められて……。
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