あなたに、キスのその先を。
 ここを予約した際に、コース料理も一緒に頼んであったみたいで、オーダーは飲み物だけ尋ねられた。
 それらも含めてまだ何も運ばれてきていない状態だったので、修太郎(しゅうたろう)さんは今のうちに、と思われたのかもしれない。

「えー? こんなに景色いいのに?」

 言いながらも、佳穂(かほ)さんはすぐにニコリと笑うと、「じゃあ健二(けんじ)、修太郎が座ってた側にずれて。私、健二が座ってるところがいい」と仰る。
 気持ちの切り替えが早いというか、機転がきくというか。強引さのなかにもどこか憎めないところが感じられて。

「相変わらずワガママな女だな」

 言いながら、健二さんもそれほどお嫌ではないのか、スッと席をお立ちになられた。
 結局私以外の皆さんが席を代わられて、私の左隣――窓側――に修太郎さん、その正面に佳穂さん、佳穂さんの左隣に健二さんで落ち着いた。

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